• 記事掲載のお知らせ_あきた経済 May 2023

    御令孫の原太さんが丁寧にご案内するものです。白井晟一関連の書籍からも中々確認することができない生きた情報が掲載されています。取材チームには弊社にもお越しいただき、レストラン利用を含めてお話させていただき、よく意見交換をすることができました。

    原太さんとは2010年から交流を続けており、茶室や庭園などの重厚な取り組みをご一緒しています。今回はその経緯にも少し触れていただき、また、建物の基本情報として原太さんとの仕事である”幽玄席”が名前として残ることに感慨深いものを感じています。

    白井晟一が湯沢で触れた”旦那衆”と呼ばれる方々のご縁から多くの建築が生まれ、街をかたちづくっていったこと。その仕事が後世まで残り、語り継がれていること。私たちの仕事がその一部を担いながら時代を超えて地域に寄り添えることに喜びを感じています。産業と文化を繋ぎ、私たちにしかできないことを追求していきたいと思います。ぜひ、誌面をご覧ください。

     年前.

    News of Article Publication_LIXIL eye JANUARY 2023 no.28

    LIXIL eye”, an information magazine on architecture and urban development, features the work of Yamamo. Mr. Genta, a grandson of Seiichi Shirai, carefully guides visitors through the architectural complexes left behind by Seiichi Shirai. The article contains information that cannot be found even in books related to Seiichi Shirai. The interview team also visited our company and had a chance to talk with him, including the use of our restaurant, and exchange opinions with him often.

    We have been in contact with Mr. Genta since 2010, and we have been working together with him on the tea house, garden, and other stately initiatives. I was deeply moved by the fact that the “Yugen-seki,” which is the basic information about the building and his work with Mr. Genta, will remain as the name of the building.

    Many architectural works were born from the relationships with the “masters” that Seiichi Shirai came in contact with in Yuzawa, and they shaped the city. Their work has been handed down to future generations. We are delighted that our work has played a part in this and that we are able to stay close to the community throughout the ages. We will continue to pursue what only we can do, connecting industry and culture. Please take a look at our magazine._mediainfo._magazine

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    報紙出版_LIXIL eye JANUARY 2023 no.28

    我們公司 Yamamo 的努力已刊登在建築和城市發展信息雜誌“LIXIL eye”上。 白井徵一的孫子原太先生將細心帶您參觀白井徵一留下的建築物。 它包含即使是與白井晟一有關的書籍也無法輕易確認的實時信息。 採訪組還參觀了我們公司並談到了使用餐廳的情況,我們能夠很好地交換意見。

    我從 2010 年開始接觸原太先生,我們共同致力於茶室和花園等具有深遠意義的項目。 這次稍稍涉及了歷史,原先生的作品“遊元石”的建築物的基本信息仍保留為名稱,這讓我深受感動。

    白井晟一在湯澤結識了被稱為“丈夫”的人,許多建築由此誕生,城市也隨之成型。 作品留傳後世,流傳至今。 我們很高興我們的工作在其中發揮了作用,並且隨著時間的推移,我們與當地社區的關係越來越密切。 我們願連接產業與文化,追求只有我們能做的。 請看一下雜誌。

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    産業観光による再生

    髙橋泰(ヤマモ味噌醤油醸造元 髙茂合名会社 代表社員)

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    事業内容

     弊社は1867(慶応3)年創業の味噌醤油醸造元です。栗駒山系の伏流水を用い、7つある土蔵を利用し、天然醸造を行っています。長年にわたる蔵付酵母の研究からオリジナル酵母Viamver®(ヴィアンヴァー)を発見し、これを利用したワインなど業界を超えた革新的な製品開発を行っています。また、味噌醤油の販売のみならず、ファクトリーツアー、レストラン、アートギャラリーなど様々なコンテンツを積層させ、最終目的地として利用していただけるよう、産業観光に取り組んでいます。この産業観光により、インバウンドとアウトバウンドの双方を行う蔵として伝統産業の未来を模索しています。

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    伝統を基礎とした革新的技術

     Viamver®酵母は、従来と異なる様々な角度から試験を行った10年目の醸造物から発見した、蔵付酵母をルーツにした特殊な酵母です。本酵母の効能を客観的に残すべく、2020年に日本醸造学会で発表を行い、2022年には特許を取得しました。通常、味噌醤油の醸造に活用される酵母は好塩性で、塩分環境下で活躍するものです。しかしViamver®は好塩性であるだけではなく、無塩でも活動ができ、かつ、アルコールを6%生成する能力を持つことが分かりました。これにより、世界でも類まれな調味料由来の酵母で酒類製造が可能となり、2021年にはワイン醸造に成功しました。さらに、魚介由来の旨味成分であるコハク酸の生成能力も持ち合わせ、フルーツや吟醸香に似た華やかな香りと肉質改善効果も確認しました。このような複数の効能から、発酵による旨味と香りを付与した特殊な食の世界、ガストロノミーの領域をレストランで体験できるようにしています。
     いま取り組んでいるのが、本酵母を使った「どぶろく」の醸造です。県内外の2社に醸造委託し、県内は新ジャンルのクラフトサケを牽引する男鹿市の「稲とアガベ株式会社」、県外は世界のデスティネーションレストランに選出されたオーベルジュである岩手県の「とおの家 要」と協業しています。この土地で発見された酵母で醸造した酒と料理をペアリングすることで、弊社にしかできないレストラン体験を充実させたいと考えています。

     このように、Viamver®酵母は調味料とアルコールなどの業界の垣根を越えた取り組みを可能とします。最新の取り組みではパン、チーズ、バターへの応用に成功し、その応用領域を拡張することで革新的な製品やサービスを生み出し、日本の伝統産業のコア技術からイノヴェーションを起こし、その価値を世界に示したいと考えております。

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    産業観光について

     いま、注力しているのはインバウンドに関する事業です。コロナ禍で旅行代理店が新しいビジネスモデルを模索し、少人数高単価の企画を要望されておりました。もともと弊社は、お一人様500円でファクトリーツアーを受け入れるところからスタートしましたが、ツアーの改善を繰り返し、ワークショップによる実践的学びとガストロノミーによる食のエンターテイメントを実装しました。現在は5,000円で展開し、Viamver®酵母による飲食のペアリング、具体的にはひと口サイズのアペタイザーとワインを木樽の立ち並ぶ諸味蔵の中で召し上がっていただくところからツアーを開始するという高付加価値のサーヴィスを実現しています。

     旅行代理店からは、このペアリング付きのツアーに3皿のコースランチの要望があり、お一人様10,000円というプランをご用意しました。実績として、台湾の方々20名6回の受け入れを今年の1、2月に実施しました。また、3、4月は、米国のハイエンドクルーズ船から、10名ずつ2回の受け入れをしました。お一人様10,000円で20名、他に飲み物やお土産の販売を合わせると、まとまった金額の売上となり、産業観光やインバウンドが産業再生の基軸となれる実感を持ち始めています。

     なお、弊社はコロナ前からインバウンドとアウトバウンドを分けて考えず、アウトバウンドで海外に取引先ができれば、その取引先にインバウンドとして来ていただき、また、インバウンドで来ていただいた方に製品が気に入ってもらえれば、それがアウトバウンドに繋がると考えています。

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    ターゲットと質感

     昨年の秋口から、米国シアトルやシリコンバレーからフードテックの役員や投資家の方にお越しいただき、ディナーを提供する機会をいただいております。当時、弊社では「カフェ」の形態をとっていましたが、彼らは「『レストラン』にしないと、自分たちも貴社に顧客を紹介しづらい」というご意見をいただきました。また、価格についても、9皿のディナーで10,000円、ペアリング付きで20,000円だったのですが、「もっと価格を上げないと、格式や内容を世界に提示できない」と価格についても助言をしていただきました。そこから、100年を経過する仕込蔵や初代の蔵などの複数のロケーションを巡りながら9皿のペアリング付きディナーを30,000円で提供するハイエンド向けのモデルをつくることができました。

     当初、弊社は本格的な飲食営業を想定しておりませんでした。蔵元の生活風景や歴史・文化的背景を伝えるための軽度なものを考えていたのですが、コロナ禍のもとでワールドベストレストラン1位のnomaに関係するドイツ人シェフと巡り合い、Viamver®酵母を料理に表現することを始めました。そして、このチームに研究者を加え、多くの実験と試行錯誤を繰り返すことでハイエンドな方々にもご満足いただけるような質を担保することができるようになりました。

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    新たな領域へ

     地域の中でハイエンド向けの製品・サーヴィスを行うことは価格設定について問題を抱えることになります。弊社の製品、例えば味噌は150グラムを約600円で販売していますが、国内では非常に高額なラインになります。しかし、実際に海外のハイエンドな方々にとっては、5ドルほどになり、米国内での感覚は日本における200円程度に過ぎません。そのため、「ハイエンドな体験ができる」という旅行代理店の説明があっても、本国の方にギフトとして渡すことができない、安すぎる価格になってしまいます。

     味噌醤油は、日本国内では「食のインフラ」の側面があり、ある程度皆さまが購入できる価格に設定しなければならないのですが、ハイエンドな方々が買える価格帯にしていくことも必要です。インバウンドを戦略にしていく上で、この価格差の問題は、インバウンドを推進する日本全体で考えていくべきことと思っています。

     弊社は、商品やサーヴィスの販売体制を顧客により切り替えていくことで国内と海外の価格差の問題を解消しようと考えています。例えば、ファクトリーツアーの内容を一部変更し、通常は入れないエリアに入れるようにしたり、市場に出さない特別な製品を販売したりなど、外国人向けの高額な価格帯で製品・サーヴィスを提供し、あわせて、地元のお客様にもお使いいただける価格帯も取り揃えます。発酵食で安心安全な食のインフラを提供し、かつ、ハイエンドの嗜好品までを扱うことは、長く続く調味料メーカーだからこそできる未来型の取り組みであると考えています。また、課題が山積する地域の伝統産業が新たな領域を開拓していく姿を見せていくことが、地域再生の兆しを生み出します。

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    今後の展開

     以前から、宿泊設備を備えたレストランである「オーベルジュ」の達成を目標にしておりましたが、実現できないまま今日に至っています。そうしたお客様は「ヤマモの世界観」を評価し、それを理解するために宿泊したいという欲求を持っています。一昨年前から、弊社や地域に残る独自文化の再構築による環境整備を進めています。19年連続日本一の庭園、足立美術館を手掛けた小島佐一の最後の弟子・横山英悦氏に弊社庭園の再監修をしていただき「辿柒園(せんしつえん)」と命名しました。また、戦中に湯沢に疎開したモダニズム建築家の白井晟一のご令孫・白井原太氏と茶室「幽玄席」を建築し、専門家や文化人との協業による価値の蓄積を続けています。本年はこのチームにより、敷地内の蔵をリノヴェーションし一棟貸しの宿にすることで、上質な文化体験のできるオーベルジュの実現を目指します。

     また、台湾の方々にお越しいただいたことがありましたが、それは東北の際立ったコンテンツを巡るツアーで、飛行機で成田に到着し、そこからシャトルバスで蔵王スキー場に行き、弊社でツアーランチを行い、銀山温泉に泊まるというものでした。外国人旅行客の移動は、都道府県は関係なく、目的地が遠くても限られた日程の中で行きたいところには訪れるというものです。彼らに選ばれる場所になるためには、日本人のイメージする秋田県や東北といった行政区の「面」で受け止める意識ではなく、単独でも目的地となる「点」の意識を持つことが個性を際立たせる上で重要になります。「個性を追求した結果、お客様に選ばれたルートが『面』となる」と考えていくべきです。今後も、弊社はそういった意識と戦略を持って歩みを進めていきたいと思っています。

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    地域全体の生き残り

     ローカルにおいて、地元に根ざした産業やメーカーが高級化路線に舵を切り、地元向けの商売を捨て、生き残りをはかる方法論はあり得ると思います。その方法だと産業自体は短期的に生き残る可能性はありますが、弊社が成し遂げたいことは長期の視座を持ち、自社だけの生き残りではなく、地域全体で存続していくことです。学校や病院などの地域の様々なインフラをしなやかに維持しながら、自社も存続していくという考えのもと、地元の方々と共に歩んでいけるようなモデルをつくりたいと思っています。

     弊社が、メーカーとしてのブランドを確立し、地元に寄り添いながら地域の再生をはかっていくことが国内でも他に先駆けたモデルになれると思います。もちろん、全ての業者がハイエンド向けのサービスをする必要はありません。しかし、再生や発展の領域は必ずハイエンドからもたらされ、徐々に波及していきます。ハイエンドのニーズを受け止められる存在や評価が、多くの方々に選ばれる場所になるのです。技術革新により産業の在り方はどんどん変化していきます。未来の消費は観光などエンターテイメントにシフトしいていきます。その中で地域がどのような歴史や文化と共に歩みを進め、産業発展し、その土地が耕されたのか。土地にその形跡を残しながらエンターテイメントを取り入れ、イノヴェーションを起こすべく研鑽を積み、古くて新しい産業として価値を提案できる存在でありたいと考えています。

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